【3/29公募要領公開】中小企業省力化投資補助金の概要を解説

令和6年3月29日に「中小企業省力化投資補助金」の公募要領が公開されました。この補助金はIoT・ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品の導入を支援する補助制度であり、令和8年まで継続的に公募が行われる予定です。

この記事では、「中小企業省力化投資補助金」について補助金の目的や対象者、補助金額などの概要を解説していきます。ぜひ参考にしてください。

この記事は次のような人におススメ!          

●そもそも中小企業省力化投資補助金ってなに?
●どんな人が補助金の対象になるの?

●申請方法を知りたい

目次

「中小企業省力化投資補助金」とは?

「中小企業省力化投資補助金」は中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするため、人手不足に悩む中小企業等に対して、IoT、ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品を導入するための事業費等の経費の一部を補助することにより、簡易で即効性がある省力化投資を促進し、中小企業等の付加価値額や生産性向上を図るとともに、賃上げにつなげることを目的とします。

中小企業省力化投資補助金より引用

この補助金は、今年のトレンドである「省力化」を目指す中小企業に対して汎用品(カタログ品)を導入するための補助金です。

カタログに登録されている製品を選ぶだけの比較的簡単な補助金です!

なお、個社の状況に合わせてシステム開発を伴う設備投資は「ものづくり補助金(オーダーメイド枠)」で対象となります。

「中小企業省力化投資補助金」の補助上限額、補助率など

補助金の概要は以下のように補助率は2分の1になっており、従業員数に応じて補助上限額が変動します。

従業員21名以上の場合、補助上限額は1,000万円となります。

また、大幅な賃上げを実施した事業者は上限額が通常の1.5倍となり( )の数字へと引き上げられます。
そのため、従業員数21名以上の場合、補助上限額は最大1,500万円となります。

この「大幅な賃上げ」に該当するためには、申請時と比較し、補助事業期間終了時点で下記の2項目ともに達成する見込みの事業計画を策定することが必要です。

(a)事業場内最低賃金を 45 円以上増加させること
(b)給与支給総額を 6%以上増加させること

補助事業期間終了時の実績報告において、賃上げの目標が達成できていないことが確認された場合には、補助額が減額される可能性がありますので、「賃上げ要件」で申請する際には、十分ご注意ください。

補助金の要件:年平均成長率3.0%以上の労働生産性向上

この補助金をもらうための要件として、「補助事業終了後3年間で毎年、申請時と比較して労働生産性を年平均成長率(CAGR)3.0%以上向上させる事業計画を策定し、採択を受けた場合はそれに取り組まなければならない。」と公募要領に記載されています。

補助事業終了後3年間、毎年「申請時と比較」することが必要です。
3年間で9%以上ではありませんので、注意してください!


なお、労働生産性は以下のように定義されており、計算式に当てはめて計算する必要があります。

(付加価値額)=(営業利益)+(人件費)+(減価償却費)
(労働生産性)=(付加価値額)÷(従業員数)
(労働生産性の年率平均成長率)=
[{(効果報告時の労働生産性)÷(交付申請時の労働生産性)}^(効果報告回数※)-1 -1]×100%

中小企業省力化投資補助金より引用

※式中の各値は、報告を行う時点で期末を迎えている直近の事業年度の値を用いる。

申請方法について

省力化投資補助金は、申請者がカタログから導入したい製品を選び、登録している販売事業者が申請をサポートする「販売事業者との共同申請」方式です。

つまり「IT導入補助金」の設備版といえます!

この共同申請方式のメリット、デメリットは以下のとおりです。

<メリット>

登録販売事業者が事業計画策定を
サポートするため、申請者の手間が少ない

<デメリット>

カタログに登録された製品でないと
導入できないため、導入設備が制限される

なお、2024年4月3日時点現在、まだ「中小企業による申請」「販売事業者の登録」ともに開始されていません。
公募開始スケジュールも未定となっているため、中小企業がこの補助金を活用して設備導入できるのはもう少し先になりそうです。

製品カテゴリについて

「製品カテゴリ」とは省力化補助金が対象にしている製品の枠のことで、現在9種類が登録されています。
飲食サービス業、宿泊業を中心に製造業なども使える機器が多いです。

9種類の製品カテゴリ解説 2024年3月29日時点
…………………………………………………………………………………………………………………………
券売機(飲食サービス業)
→注文受付、券類の発行、支払・決済業務を自動的に行う機器です。注文受付、請求・支払、顧客対応が効率化できます。

自動精算機(飲食サービス業・小売業)
→主に商品販売時及びサービス提供時における支払・精算対応又はつり銭等現金の受け渡しを自動的に行う機器です。注文受付、請求・支払、顧客対応を効率化できます。

自動チェックイン機(宿泊業)
→予約管理機能/チェックイン機能/生産・会計機能に加え、省力化に資する観点からチェックアウト機能/カードキー発行機能を有するものが望ましいとされています。受付案内、予約管理、請求・支払、顧客対応が効率化できます。

スチームコンベクションオーブン(宿泊業、飲食サービス業、小売業)
→コンベクションオーブンに、蒸気発生装置を取り付け、熱風、水蒸気、熱風+水蒸気を利用し、焼く、蒸す、煮る、炊く、炒めるなど多様な加熱調理を1台で担うことができる調理機器です。また、プログラム機能を持ち、料理、食材ごとに加熱時間、温度等を登録でき、使用する人間を問わず調理品質を保つことができます。保管・在庫管理、調理が効率化できます。

無人搬送車機(AGV・AMR)(製造業、倉庫業、卸売業、小売業)
→機器自動で走行する車両または台車で、もの(パレット、ケース、台車など)を移載やけん引できる機能を有し、機器に組み込まれたマップや決められた位置情報やルートに基づき、自動で移動が可能なものが対象です。資材調達、加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫が効率化できます。

検品・仕分システム(製造業、倉庫業、卸売業、小売業)
→検品と仕分けが一体で完成するシステムです。ものを検品することで、仕分けのための情報を得ることができ、多くのものを目的に沿って仕分けることが可能になります。資材調達、加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫が効率化できます。

動倉庫(製造業、倉庫業、卸売業、小売業)
→パレットやケース、コンテナを自動的に入出庫・保管できる倉庫です。保管する棚、出し入れする機械、前後の荷受け・荷渡し装置で構成され、コントロール、管理するシステムも含みます。保管・在庫管 理・入出庫が効率化できます。

清掃ロボット(飲食サービス業、宿泊業)
→各種センサにより人や障害物を回避しながら自立走行で床を清掃(湿式、乾式等)するロボットです。清掃業を効率化できます。

配膳ロボット(飲食サービス業、宿泊業)
→各種センサにより人や障害物を回避しながら自立走行により料理や飲み物等(導入する業種によっては、物資・部品や梱包物等)を人に代わって配膳するロボットです。配膳業務を効率化できます。

製品カテゴリは、工業会など各種業界団体が事務局に登録申請を行い、中小企業庁が承認を行います。
製品カテゴリの基準に沿った製品であればカタログに登録することができます。

今後は製品カテゴリが拡大していき、多くの事業者が使えるような補助金になりそうです!

なお、2024年3月29日時点では製品カテゴリの登録のみを募集しており、カテゴリへの製品登録、販売事業者の登録はまだ募集されていません。

中小企業(申請事業者)による申請の流れ

設備導入を検討している事業者が実際に行う申請の流れを解説します。

STEP
gbizIDプライムを取得

申請はすべて電子申請システムを使用して行うため、事前にgbizIDプライムアカウントの取得が必要です。

オンライン申請であれば即日発行できますが、郵送申請の場合は1週間程度を要します

STEP
導入したい製品と販売事業者を選ぶ

製品カタログから補助事業で導入したい省力化製品を選ぶのと同時に、申請をサポートしてくれる販売事業者を選びます。

STEP
販売事業者と共同で事業計画を策定する

省力化補助金の要件となっている労働生産性の要件や賃上げ(賃上げ要件の場合)を満たすような事業計画を販売事業者と相談しながら策定します。

STEP
交付申請

電子申請システムにログインして、交付申請を行います。

STEP
交付決定および設備導入

中小機構により審査が行われ補助事業の採択通知が行われます。省力化補助金の場合、採択通知=交付決定となりますので、採択通知(交付決定通知)が届いたら、対象の省力化設備を導入します。

事前着手制度はありませんので、必ず交付決定後に設備の契約・発注・導入を行う必要があります。

STEP
実績報告(交付決定より12か月以内)

補助事業の実施期間は交付決定より12か月間となっています。それまでに設備導入~支払完了し、実績報告の提出までを完了しなければなりません。

STEP
補助額の確定及び補助金の支払い

実績報告に基づき、事務局が補助金額の確定を行います。補助事業者は事務局に対して支払請求を行うことで補助金が支払われます。

STEP
効果報告(補助事業完了後5年間)

補助事業が完了してからも5年間は報告が求められます。事業完了後、3年間は労働生産性の達成目標が評価され、その後も5年間経過までは報告義務を怠ると交付決定取消の可能性があります。

なお、報告期間が終了した後も、耐用年数期間は取得した資産を管理する義務があるため、耐用年数経過までは該当資産の処分は注意が必要です。

省力化補助金を活用する際の注意点

最近では、ものづくり補助金や事業再構築補助金などを補助金を活用する場面が増えていますが、国から補助金の重複だと判断された場合には対象外になってしまうため、過去にこうした補助金を活用したことのある事業者は注意が必要です。

  • 過去に本事業の交付決定を受けた事業者
  • 過去に中小機構の「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の交付決定を受け、それから10ヶ月を経過していない事業者
  • 過去3年間に、2回以上、中小機構の「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の交付決定を受けた事業者
  • 中小機構の「事業再構築促進補助金」に採択された事業者であって、その補助対象である事業に用いるための機器を本事業で導入する事業者
  • 観光庁の「観光地・観光産業における人材不足対策事業」により設備投資に対する補助金の交付決定を受けた事業者、あるいはその申請を行っている事業者
  • その他の国庫及び公的制度からの二重受給・間接直接を問わず、(過去又は現在の)国(独立行政法人等を含む)が目的を指定して支出する他の制度(例:補助金、委託費、公的医療保険
    ・介護保険からの診療報酬・介護報酬、固定価格買取制度等)と補助対象経費が重複しているもの。
    ・補助対象経費は重複していないが、テーマや事業内容が中小機構の「IT 導入補助金」と同一又は類似内容の事業(同じ業務プロセスに省力化製品を導入するもの)。
    ・なお、これまでに交付を受けた若しくは現在申請している(公募申請、交付申請等すべて含む。)補助金及び委託費の実績については必ず申請し、これらとの重複を含んでいないかを事前によく確認すること。
  • 本事業の製造事業者、販売事業者に該当する場合
中小企業省力化投資補助金より引用

特に(4)のように事業再構築補助金で採択された事業に用いる機器を導入する場合など、対象経費(設備)が異なる場合でも「同じテーマの事業」だと判断された場合には、対象外となってしまうため注意が必要です。

まとめ

今回は、中小企業庁より2024年3月に新たに公表された「中小企業省力化投資補助金」の概要や申請方法などについて紹介しました。

記事をおさらいしたいポイントは、次のとおりです。

まとめ
  • 「中小企業省力化投資補助金」は汎用製品を導入するための補助金
  • 製品カタログから選んで、販売事業者と共同申請する「IT導入補助金の設備版」
  • 申請時と比較して労働生産性3.0%以上向上、「賃上げ要件」で補助金額の上乗せ

省力化補助金は、中小企業にとっては申請の手間も少なく使いやすい補助金です。
人材不足で困っている事業者は多く、国としても設備導入による業務の効率化や省力化(DX)を強く押しています。

これから設備導入を考えている方は、ぜひご活用ください!

なお申請をご検討されている方は、必ず公式サイトより最新情報をご確認ください。
公式サイト:中小企業省力化投資補助金

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