ビジネスの中でも最も廃業率が高いのが「飲食店」です。
その廃業率は長年の統計によるデータで示されており、目安として下記の通りになっています。
1年後の廃業率:30%
2年後の廃業率:50%
3年後の廃業率:70%
10年後の廃業率:90%
つまり飲食店を開業して10年間続けられるのはわずか10人に1人ということになるんです。
飲食店の廃業率はすべての業種の中でも特段高い数値であり、飲食店を続けていくことの難しさを物語っています。
なぜ、このような状況が起きてしまうのか、その理由を起業コンサルタントの実体験を交えて解説します。
❶開業しやすいビジネスモデル
❷事業コンセプトが設計できない
❸収支計画が作れない
❹開業後は調理以外に手が回らない
❺顧客満足度が下がり、リピーターが増えない
開業しやすいビジネスモデル
「食べる」という行為はヒトの三大欲求の一つでもあり、誰しもにとって分かりやすいサービス内容である。
世の中にまだないビジネスモデルを創出するベンチャー企業やスタートアップとは異なり、開業後のイメージがしやすく、「開業してみよう」という気持ちになりやすい点が挙げられます。
開業率も最も高い業種であり、それ自体はプラスにも捉えられます。
店舗コンセプトが設計できない
飲食店開業の相談に来られる方の多くは、「こんな料理が作れます。」というのはよくお話されます。
しかし、「どんなお店にしたいか」「どんな人に来て欲しいのか」があまり考えられていないまま開業を進めてしまうケースをよくお見かけします。
実際に開業相談を受けていると、本来「どんなお店にしたいか」というコンセプトを設計したうえで、コンセプトに合った立地や物件、内装、厨房設備、食器などを揃える必要があるのに、「何も決まっていないけど物件だけ決まっています。」といったケースが意外にも多いことに驚きます。
当然、メニューや価格設定も決まってなければ、販促の方法なども決まっていません。
収支計画が作れない
店舗コンセプトが決まっていなければ、収支計画も決まっていないケースがほとんどです。
収支計画書の数字の欄はいつまで経っても空白で埋まらない。
理想とする売上高は出てこず、平均客単価、回転数、回転率などはもちろん説明できない。
仕入原価を全く考えていない。人件費を全く考えていない。経費を全く考えていないなど。
一般的な目安としては、家賃の10倍が目標売上高、仕入原価・人件費が売上高の60%以内であれば事業が回っていくとされているが、目標売上高が家賃の2倍なんてことも珍しくありません。
開業後は調理以外に手が回らない
それでもなんとかして開業までこぎつけたものはいいものの、開業後は当面の間、仕込み、調理、接客などに忙殺されることになります。飲食店は「新しいお店が行ってみよう」とオープン需要があるため、まだオペレーションが固まっていない中での対応となるため、他のことをやる余裕はありません。
そして、ここにきて「飲食店経営」の恐ろしさに気付きます。
料理の腕には自信があるものの、実際に経営となると料理以外にもやることはたくさんあります。
開業前には予期していなかった日々の売上管理や経理処理、雇用が発生すれば社会保険の手続きなどに手間取って焦るばかりです。
顧客満足度が下がり、リピーターが増えない
飲食店を「経営」するためには本業の料理以外に時間を取られてしまい、今度は本業に集中することができなくなり、料理や接客、サービスにも影響を及ぼします。すると些細なことで顧客満足度が下がり、低い口コミ評価に繋がってしまいます。
特に開業期では、顧客はどんなお店か気になるため、少ない口コミであっても低評価が付いていると敬遠したり、バイアスが掛かった状態での来店になりやすいです。オープン特需が終わるころにはリピーターが付いておらず、思ったように売上が伸びず、気持ちばかり焦った状態になってしまいます。
こうして1年を経過するころには身も心もボロボロになり、30%が脱落していくことになります。2年目を迎えると融資返済の元本据え置きもなくなり、悪循環に拍車をかけてその割合は50%に。
自己資金でなんとか2年目を凌いでも、顧客が一向に増えないため収支が合わず3年目は70%に。
飲食店開業は店舗内装工事や厨房設備など、初期投資が大きくなるケースがほとんどです。
その場合、1年間で閉店してしまい、借金だけ背負ってサラリーマンに戻ることもあります。
たとえ料理のプロであっても、開業する際には「経営者」になることを自覚し、「3年で70%が廃業」することを念頭に時間をかけて準備をすることをお勧めします。
廃業するのは「圧倒的に準備が足りていない」という理由があるため、ぜひ少しでも多くの方が飲食店開業で成功して欲しいと願うばかりです。
コメント